【導入事例 Vol.3】「稼働後」にこそ真価が問われる。カスタマイズだからできる伴走の正体

システム開発の本当の勝負は、リリースしたその日から始まる。 特に今回のように、旧システムからのリプレイスや業務フローの変更を伴う場合、現場の混乱は避けて通れない。
今回のプロジェクトも例外ではなかった。 第3回は、システム稼働直後の現場で何が起き、TECHNOPIAN株式会社(以下、テクノピアン)がどのように対応したのか、その結末を描く。
「業務をシステムに合わせるのではなく、業務のためのシステムを作る」が信条。数十社以上の導入指揮経験を活かし、徹底した要件定義によって、スクール独自の複雑な運用ルールを最適なシステムにする過程をお伝えします。
「ただの講座販売」ではない。「資格維持」という壁
今回のお客様のビジネスモデルには、単なる「講座販売(フロービジネス)」とは異なる、「会員管理(ストックビジネス)」の側面がある。 これがシステム要件を複雑にした。
資格は、取って終わりではない。資格を維持するためには、年会費を支払い続ける必要がある。支払いが滞れば、ライセンスは失効する。つまり、システムは常に「誰が・いつ・いくら支払ったか」を厳密に管理し続けなければならない。
開発過程で浮上したのは、この「年会費の請求ロジック」の複雑さだった。 テクノピアンは、マイページの設計においてこの点を織り込んだ。受講者がログインすると、自分の受講スケジュールや取得資格の一覧に加え、支払い予定が表示される。自動引き落としに失敗した場合などは、マイページ上で未払いの案内が表示され、その場でコンビニ決済等で支払いができる動線を設計した。

お金の取りこぼしは、組織の存続に関わる重要課題だ。こうした「裏方」の仕組みこそ、パッケージSaaSでは対応しきれず、カスタマイズの真価が問われる部分である。
本番稼働後も現場の声を拾い上げて改善する
本番稼働後の数ヶ月は、多くのプロジェクトで問い合わせが増える時期でもある。実運用を想定した受入テストは実施していても、実際の現場と同じ密度・緊張感で再現することは難しい。
本案件でも、稼働から半年間で80件以上の問い合わせが発生した。特に最初の3ヶ月は、新しい業務サイクルを通じて「実際に使ってみて気づく改善点」が集中的に寄せられた。
テクノピアンの対応方針は明確だった。「使ってみて、これはしんどいだろう」と判断した問題は、サポート費用の範囲内で修正を行った。すぐに修正できない場合は、データベースの直接修正でフォローしつつ、「この日から直します」と期限を約束した。
問い合わせの一つ一つを課題管理表に起票し、対応状況をお客様と共有する。画面の使い勝手に問題があれば、運用が始まってからでもUIの微修正を行う。単に「仕様です」と突き放すのではなく、現場の声を拾い上げて改善を重ねた。
半年後の変化
この地道な対応は、目に見える形で結果を生んだ。 稼働から半年が経過した頃、問い合わせ件数は月数件にまで激減。10月以降の問い合わせは3ヶ月で13件程度。最初の3ヶ月と比べれば劇的な改善だ。
それはなぜか。 システムが現場に「馴染んだ」からだ。度重なる改修とサポートによって、システムは現場の業務フローそのものになっていた。
お客様の声を借りれば、「システム切替が大変だったということはない。従業員からも文句はなく、スムーズに運用できている。講座の作成も問題なく、今のところ改修要望もない」。
熟練の事務員しか使えなかった旧システムとは対照的に、「人が変わっても継続利用できる」システムへの移行は、静かに、しかし確実に完了した。
「独自の強み」を持つ企業こそ、システムを自社に合わせるべきだ

全3回にわたり見てきた今回の事例。ここから得られる教訓は明確だ。
世の中には「Fit to Standard」、つまり標準に合わせることが正義だという考え方がある。 しかし、あなたの会社の「強み」や「他社との違い」が、その独自の業務フローの中にあるのだとしたら? それを標準化して捨て去ることは、自らの競争力を捨てることと同義ではないだろうか。
今回のお客様の「1つの会場に複数の試験を詰め込む」という運用は、一見すると特殊だ。しかし、会場コストを最小化して利益を最大化するという経営の知恵そのものだった。テクノピアンは、その運用を「変えるべき非効率」ではなく「守るべき強み」として理解し、システム側を適応させた。
テクノピアンが提供したのは、単なるシステム開発ではない。 業務フローの可視化から始まり、要件を一緒に掘り起こし、投資すべき箇所を見極め、稼働後も課題が解消するまで伴走する。その一連のプロセスだ。
パッケージSaaSでは窮屈すぎる。そんな独自の業務を持つ企業にとって、業務を深く理解した上でカスタマイズできるパートナーの存在は、システム選定における重要な選択肢となるはずだ。
【導入サマリ】TechnoSMS 導入概要
本事例の導入概要をまとめる。TechnoSMSの導入を検討されている方の参考になれば幸いだ。
| 項目 | 内容 |
| 導入先 | NPO法人 酒類総研(飲食業界向け資格運営団体) |
| 業種 | 酒類サービス/飲食サービス業界向けの教育・資格サービス |
| 導入システム | Webコース販売、受講生管理、講座管理、請求債権管理、受講生マイページ |
| 主なカスタマイズ | Web申込機能拡張(会場主導の定員管理、購入時に試験日程を選択して申込)、マスタ登録の入力支援、受講生の資格管理、受講生の講座申込みや成績情報等の一括更新等 |
| 開発期間 | 約1年 |
| 開発費用 | 1,000万円〜 |
| 月額費用 | 旧システムとほぼ同等(詳細は個別見積) |
| 利用者規模 | 事務局スタッフ12名、受講生マイぺージ10,000件超 |
カスタマイズの範囲について
TechnoSMSは、スクール管理のベースパッケージをもとに、顧客の業務に合わせたカスタマイズを前提としたシステムである。今回の事例では、以下のようなカスタマイズが行われた。
標準機能でカバーした範囲として、受講生のWeb申込(クレカ・コンビニ決済対応含む)、マイページ、講座のスケジュール管理、請求・債権管理、口座引き落とし連携、メール配信などがある。
一方、カスタマイズで対応した範囲としては、「会場」を起点とした定員管理ロジック(標準は「コース」起点)、1会場・複数試験の同時開催に対応するスケジューリング、マスタ登録の入力ステップ削減(標準55ステップ→カスタマイズ後に大幅短縮)、受講生の資格管理、年会費未収者に対するコンビニ決済連携などがある。
また、あえてシステム化しなかった範囲もあり、法人マスタの変更・法人受講情報の取込(運用でカバー)、大量データ更新(Excel併用の方が効率的と判断)、中国系決済対応(別の決済代行会社を紹介)などがこれに該当する。
費用感の目安
開発費用は、要件の複雑さやカスタマイズ範囲によって大きく変動する。今回の事例は、当初の見積り工数と比較して1.4倍に増加した。これは「必要な機能を取捨選択しながら、投資対効果の高い部分に予算を集中させた」結果であり、画面ごと・機能ごとの詳細見積りによって、顧客自身が優先順位を判断し採用された仕様である。
なお、月額のランニングコスト(サポート費用含む)は旧システムと同等水準で、サポート費用の範囲内で軽微な改修にも対応する体制となっている。
【インタビュー協力】酒類総研様のご紹介

今回の導入事例にご協力いただいたのは、NPO法人 酒類総研様(https://ssi-sake.jp/)である。
酒類総研は、日本酒・焼酎をはじめとする酒類に関する専門資格の認定・講習会の企画運営を行うNPO法人だ。「唎酒師」「ソムリエ」など、飲食業界のプロフェッショナル育成を担い、全国各地で講習会・認定試験を開催している。飲食店スタッフのスキルアップから業界全体の底上げまで、酒類文化の発展に幅広く貢献する団体である。
現在、酒類総研では、TechnoSMSの主要機能であるWebコース販売、受講生管理、講座管理、請求債権管理、受講生マイページを中心に講座運営が軌道に乗っている。システム切替後、従業員からの不満もなくスムーズに運用できており、講座の作成も問題なく行えている状態だ。これは、開発時の密な要件定義と、稼働後の地道なサポートが、結果として「追加投資の必要がないシステム」を実現したことの証左でもある。
テクノピアンは、酒類総研のようなお客様に対して、「システムを売って終わり」という姿勢を取らない。
受注前から業務フローを自ら作成し、要件を一緒に掘り起こし、開発中は画面を見ながら徹底的にすり合わせる。稼働後は、サポート費用の中で必要な修正を積み重ね、現場の声に耳を傾け続ける。そして、お客様が「これ以上は投資しなくていい」と言えるようになるまで、つまり、システムが本当に業務に馴染むまで、伴走し続ける。
お客様にとって最良の結果とは、「課題があるからまた次もお金をかけて機能追加しなければ」ではなく、「このまま安心して使い続けられる」という状態だ。テクノピアンが目指すのは、まさにその地点である。

「業務をシステムに合わせるのではなく、業務のためのシステムを作る」が信条。数十社以上の導入指揮経験を活かし、徹底した要件定義によって、スクール独自の複雑な運用ルールを最適なシステムにする過程をお伝えします。
